丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、現在開催中の企画展「第1回 MIMOCA EYE / ミモカアイ」期間中、1月14日(土)、15日(日)の2日間にわたり「親子でMIMOCAの日」を実施しました。当日の様子をお届けいたします。

「親子でMIMOCAの日」とは高校生以下又は18歳未満の観覧者1名につき同伴者2名までが入館無料となる取り組みです。保護者の方々が子どもと一緒に気軽に美術館に来て、作品を介して会話を楽しんでもらうことを目的としています。
この取り組みは2020年から、展覧会毎に1回と回数を決め、定期的に実施してきました。今回は館内で企画展関連のプログラムも複数開催し、さまざまな角度からのアートとのふれあい、出会いを楽しんでいただきました。

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美しい空間で、新しいアートに出会う

MIMOCAは猪熊弦一郎(1902-1993)が残した「美術館は心の病院」という言葉を理念に、身を置くことでリフレッシュできる、日常にはないような美しい空間となるよう設計されました。
この美しい空間で、多くのお子様連れのご家族が滞在されました。「第1回 MIMOCA EYE / ミモカアイ」では、作品をじっくりと鑑賞し、「近くで見たら四角がいっぱい」「トナカイがいる!」「これすごい」「赤と青がある」など感想をお話していました。

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さまざまなイベント、特別な1日

第1回 MIMOCA EYE / ミモカアイ・親子でMIMOCA賞

「親子でMIMOCAの日」にご来館された親子のみなさんに、「第1回MIMOCA EYE/ミモカアイ」出品作の中から、親子で相談して好きな作品を選んでいただく賞を設立しました。子どもたちは作品の間を行ったり来たりしながら、自分なりに「これ!」と決めて投票していました。
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大賞受賞作家・西條茜による パフォーマンス

出品作《Phantom Body -蜜と泉-》の陶器を介して、3人の演者が声や息を使って、 原始的でありながら新しい形のコミュニケーションを実践するライブパフォーマンスを展示室で行いました。パフォーマーたちが個々に陶器の穴に息や声を吹き込み、時には一つの呼吸のように、時には重低音が響きあい会話をしているかのような不思議な音が展示室に広がりました。
真剣に見入る親子の姿が印象的でした。

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DSC_0216加工.jpg西條さん(左から2番目)とパフォーマーの皆さま

準大賞受賞作家・中谷優希 アーティスト・トーク 「ケア・パフォーマンス--生活のつづき」

自身の闘病生活の経験を踏まえた出品作《シロクマの修復師》の制作の裏側を中心に、中谷さんと実際に日常生活で中谷さんのケアを担っているパートナーの2人によるトークを実施しました。
ふたりで相談しながら築き上げたケアの形について、パートナーの方と一緒にお話しいただきました。

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中谷さん(右)。パートナーの方(左)。

カフェMIMOCAの"お子さまランチ"

まちのシューレ963が運営するカフェMIMOCAでは、「親子でMIMOCAの日」にあわせて、毎回特別メニューとしてお子様ランチを提供しています。今回のお子さまランチのメインはメンチカツ。プレートには子どもたちが喜ぶメニューを取り入れ、シェフが美味しく作り上げています。幼い頃に美術館で食べるお子さまランチはきっと特別な思い出になるでしょう。

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(撮影:まちのシューレ963)

来場者の声

"広い空間で子どもと一緒でも作品を見やすくて、ライブパフォーマンスも見られて貴重な経験になった。好きなものを選んで投票するのも、参加できているようでうれしかった。子どもも喜んでシールを貼っていた。"
"投票シールのおかげで親子で感想を言い合うきっかけになった。"
"参加型だったので、親子での会話が弾み、子供の好きな感じが知れてとっても楽しかったです! 子供の自由な発想が可愛くて癒やされました!"

かつて猪熊は「子供たちの美術教育など、美の分かる人を作ることが、本当の平和を築くことになると信じます」(*1)と述べました。
心を開いて様々なことに興味を持つことで、多くの美しいものに出会えます。美しいものに共感する心は、人生を豊かにします。だからこそ、猪熊は子どものための取り組みを重要視していました。猪熊の思いを受け継いで、子どもの観覧料無料にはじまり、子どものためのワークショップや鑑賞教育にこれからも取り組んでいきます。

文/奥本 未世

企画展「第1回 MIMOCA EYE / ミモカアイ」

*1―「HOTLINE」、『月刊美術』 1992年1月号 p.94

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