丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、2021年12月18日(土)から2022年3月21日(月・祝)まで、「丸亀での現在」を開催しています。
参加アーティストの1組である「Nadegata Instant Party」の中崎透さん、山城大督さん、野田智子さんへのインタビューを、2回にわたってお届けします。まずは、丸亀の人たちがホストとなり、オンラインで日本全国のゲストを迎えた、ホームステイのプロジェクトをまとめた作品《ホームステイホーム》誕生の経緯や、コロナ禍での制作についてうかがいました。


インタビュアー・文/須鼻美緒 撮影/宮脇慎太郎

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ー今回《ホームステイホーム》に参加できて、とても楽しかったです。オンラインでホームステイに来てくれた山形の美大生や、商店街の人や本島に住む人など、丸亀側のホスト20人くらいとも顔見知りになれました。今度、商店街に行ったら「こないだはどうも!」と言える人ができたのがすごくうれしくて。まずはこういった機会をつくっていただいたことに、感謝したいです。

さて、改めて《ホームステイホーム》が生まれた経緯について教えてください。

中崎
「Nadegata Instant Party」(以下、ナデガタ)は2006年の結成当初から、チーム名にもあるように、即興的なイベントや出来事を通して、即興的な仲間や小さなコミュニティを意味するパーティができていく、そういうプロセス自体を主題に、作品づくりをしてきました。
そのつくり方として、「自分たちだけではできないから、みんな手伝って」と言えるような、けっこう無茶な「口実」を掲げてみる。そうすると、ちょっと普段と違うような出来事が起きるんです。
これまでのプロジェクトでは、映画を撮ろうとか、24時間のテレビ番組をつくろうっていうのが「口実」だったんですけど、そのこと自体が目的ではなくて。そういった口実を通して起こるまわりのことがおもしろくて、それを作品にしてきました。
今回コロナ禍という状況の中で生まれた「口実」が、オンラインでのホームステイでした。

野田
MIMOCAの竹崎瑞季さんから「丸亀という地域と向き合うようなことをテーマに展覧会をやりたいんです」ってお声がけいただいたのが2019年の初め頃で。

ー2019年というとコロナ前ですよね。コロナ禍でプロジェクトにはどんな影響がありましたか?

中崎
コロナ前から丸亀でのリサーチはやっていましたが、2020年10月に予定してた展覧会の延期が決まって。
2020年になってから、ナデガタのミーティングで盛り上がってたのが「宇宙に行く」という話。じつは宇宙船って、出られない場所の中で、どうやって時間を過ごすかが前提になってる。壮大なひとり遊びというか。みんながそこでどういうふうに過ごすかっていうのを集めたら、宇宙に行くってことになるんじゃないかと。
そこから、コロナ禍の個別の家の様子の連なり、みたいなものをイメージする中で、「ステイホーム」と「ホームステイ」という言葉が、ダジャレみたいな感じで出てきて。
タイトルから具体的な内容が決まってきたんですけど、時期的に、実際にホームステイができるのかなと。

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左・野田智子さん  右・中崎透さん

野田
最初は、身をもって移動することを前提にやってみようとも考えていたんですが、今後の状況が見えない中で、夏くらいにはオンラインに切り替えましたね。オンラインの方が、プロジェクトとしてはおもしろくなるかもしれないと。

ーそこから、まずは丸亀側のホスト探しですね?

野田
私たちは丸亀につながりがないので、竹崎さんにホストを探してもらいました。その後にホスト向けの説明会をやったんです。移動制限もあったので、オンラインでやったんですが、なかなか伝わりにくくて。
ホスト募集締め切りの1週間くらい前に、丸亀市市民交流活動センター「マルタス」で対面でも説明会をやりました。その時は、約40名が集まってくれましたね。

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Nadegata Instant Party《ホームステイホーム》ドローイング 2021年

ー商店街でホスト募集のチラシを見かけましたが、あのチラシを見て参加された方もいましたか?

野田
チラシを見て来てくれた方も何人かいました。その中に、今までZoomを使ったことがなくて、でもみんながやってるみたいなので使えるようになりたい、同世代の友達がつくりたいと言って、年配の方が来てくれたのが印象的でした。

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野田智子さん

中崎
これまでナデガタのプロジェクトの説明会は、対面でやってきたんです。説明会の後に飲みに行ったり、お茶したりとか、一人一人とお話しする中で、安心しておもしろいなと思ってくれて、2回目の説明会に友達を誘ってくれたりとか。結構ベタだけど、そういうつながりの時間があって、関わってくれる人が多かったんです。
だけど、今回はコロナ禍ということもあって、そういったオフの時間が取れなかったので、距離感が読めないということにはギリギリまで慣れなかったですね。

(後編につづく)


◎関連リンク
「丸亀での現在」