丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、んまつーポスを講師にお迎えし、子ども達が表現することの楽しさを体験できるワークショップを実施しました。今回は12月19日(日)開催の様子をお届けいたします。


開催場所:ミュージアムホール、造形スタジオ
撮影:福田ジン

子どもがさまざまな身体の動きを知り、表現する楽しさを体験できることを目的として202110月から12月にかけて月毎に内容の違うワークショップを実施しました。普段静かに過ごす美術館で、全く逆のことをするワークショップです。

12月の内容は「いのくまさんがゾンビでワンダフル!」。今まで金沢ふるさと偉人館、対馬博物館で開催された企画で、ゾンビを通して偉人や博物を身近に感じてもらうユニークな活動です。MIMOCAでも猪熊弦一郎(1902-1991)の画業や言葉ではなく"普段よくしていた行動"をゾンビの動きに取り入れてもらいました。

まずはミュージアムホールでゾンビダンスのレッスン。んまつーポス3人の動きをよく見て、身体を動かしていきます。

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子どもたち自ら衣装も作りました。ここでは着古したYシャツにマジックで色を塗ったり、ハサミや手でシャツを破ったり。

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そして振り付けに猪熊の動きを追加していきます。例えば、海外生活が長かった猪熊は挨拶をする際に握手をしていました。その「握手をする」動きをゾンビダンスに取り入れました。
最後にお墓へ戻っていくシーンでは、全員でキャンバスに絵を描く動作をしました。これは子ども達自身が考えた振り付け。「きっといのくまさんって、こんな人」と考え、自分たちなりに捉えた"いのくまさん"像です。

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衣装とパフォーマンスのお披露目は、ミュージアムホールの舞台。アップビートな音楽と見事なパフォーマンスでMIMOCAスタッフと同伴者の皆さんを魅了してくれました。

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次にホールを飛び出し、展覧会場やエレベーター、大階段、ゲートプラザへ。美術館の至る所で動く、飛ぶ、踊る!

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企画展「丸亀での現在」KOSUGE1-16《カウンタフォイル・リサーチ ヘッドライトに照らされたクリーチャーたち2021年でのパフォーマンスの様子
実施協力:KOSUGE1-16


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んまつーポス
児玉孝文氏
「参加者にダンスを好きになってほしいとはあまり思っていないです。アートを通じて、ダンスを通じて、新しい発見をしてもらえたらいいなと思っています」


豊福彬文氏
「五感を揺さぶることが大事だと思っています。今はマスクで喜怒哀楽が表現しづらい世の中だけど、身体があります。この時代、身体で自由に表現することが特に大事になってきます」


みのわそうへい氏
「"恥ずかしい"と遠ざけてしまうのではなく、自分で挑戦してみれば、見つけていけば身体が変わるっていう瞬間があります。大人たちがそこを伸ばしていけると良いと思います」


宮崎大学産学・地域連携センター客員教授/舞踏教育
高橋るみ子氏
「色々な表現手段を子どもが手に入れることはとても大事です。たくさんある手段の中から、自分が好きな方法を探したり、"あ、この方が通じるな"というのを選べるようになればいいと思っていますし、そういう方法があることだけは知らせたいです」


猪熊弦一郎(1902-1993)は「美術館を遊び場にしてほしい」(*1)という言葉を残しています。子ども達は自分なりの表現方法で、美術館を舞台にパフォーマンスをやり遂げました。

MIMOCAはこれからも、子ども達が豊かな感性を持ち、自由に表現することができるプログラムを提供していきます。


講師プロフィール
んまつーポス(namstrops)
2006年に結成、逆さから物事を考えることで新たな価値を創造するダンスカンパニー。これまでに14カ国35都市(エストニア、ルーマニア、香港等)で作品を招聘・上演。国内では、アート空間に「体育」(からだを育む思想)を展示している。宮崎市に「公立てではない公共」のコンテンポラリーダンス専用劇場(CandY)を設立(2019.3)


1
「特集 地域再生 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館<MIMOCA>を巡って」坂野長美、『SIGNS in Japan1993No.1 p.381993315日発行


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