丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、ノゾエ征爾さんを講師にお迎えし、一期一会の出会いと演劇の楽しさを体験できるワークショップを実施しました。3歳から中学2年生まで幅広い年齢の子ども達が参加しました。その中から3月5日(土)開催の様子をお届けいたします。


開催場所:造形スタジオ、ミュージアムホール、カスケードプラザ
撮影:福田ジン

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「カラダで表現!ノゾエ征爾 演劇ワークショップ」は簡単なテキストをもとにして、15分前後の短い演劇作品を一本作り、最後はミュージアムホールで1回きりの本番に挑戦するワークショップです。ノゾエさんが演出家、参加者の子どもたちが舞台役者です。


まずは造形スタジオで配られた台本をもとに配役を考えます。台本にはおじいさんが王子になりすます役、村人役が登場します。みんなで相談しながら配役を決めていきました。

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台詞の他に、歌と踊りもあります。歌にあわせてコミカルに躍るシーンで、徐々に子どもたちの緊張も和らぎ、各々の表現が生まれてきました。

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台詞の読み合わせ後、ミュージアムホールの舞台に移動してリハーサルを重ねます。
舞台の広さに負けないくらい、大きな声と表現力が求められます。ノゾエさんの演出指導を真剣に聞きながら、物語の進行、自分の台詞の言い方、表現、タイミングを落とし込んでいきます。

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本番では、なりすましのお城を建てるため、なりすましの王子が音頭をとり、村人たちが段ボールの箱を作るシーンがありました。ここはリハーサルなしの一発勝負でしたが、早く箱を作れた子が他の子の手伝いをするなど、気を配り合いながら協力して箱を完成させました。作った箱を舞台中央に運び、なりすましのお城を建てました。

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15分ほどの物語は、役者が一列になって自分の夢を語り、フィナーレを迎えました。

「一年生です。将来は、バレリーナになりたいです」
10歳です。将来の夢は、自然を守る仕事をしたいです」
6歳です。将来の夢は、病院の先生になることです」

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出来上がったなりすましのお城をカスケードプラザに持っていき、ポーズ!

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ノゾエ征爾さん
「みんな、もっとやりたかったよね。もっとセリフ言いたかったなとか、もっと大きな声で出来たかなとかね。色々あったと思うけど、そういうことで良いの。思うことが大事。そしたらその次の糧になる。
今日の演劇を通して、みんなで一緒にやったことは普段でも通じることがたくさんあると思うのね。上手くいかない友達とのこととか、それでもそれを乗り越えて協力して何か一つのことをやり遂げることはとっても大切なことで、素晴らしいことなんです。今日の小さな達成感をたまーに思い出して、嫌なことあってもその先に何かあるかもなあって、日々エンジョイしてほしいです」


猪熊弦一郎(1902-1993)は「美術館を遊び場にしてほしい」(*1)という言葉を残しています。ノゾエさんと子ども達が演劇を通して、美術館を舞台に力いっぱい表現をしてくれました。

MIMOCAはこれからも、子ども達が豊かな感性を持ち、自由に表現することができるプログラムを提供していきます。


講師プロフィール
ノゾエ征爾
脚本家・演出家・俳優。劇団はえぎわ主宰。 1999年はえぎわを始動以降、全作品の作・演出を担う。2012 年「○○トアル風景」で第56回岸田國士戯曲賞受賞。さいたまスーパーアリーナでの公演や小劇場、野外劇、音楽劇と幅広い作品の演出を手掛ける。近年の演出作品に「ぼくの名前はズッキーニ」「物理学者たち」など。



1
「特集 地域再生 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館<MIMOCA>を巡って」坂野長美、『SIGNS in Japan1993No.1 p.381993315日発行


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