MIMOCA NEWS 005



book



『洞窟へ 心とイメージのアルケオロジー』 港千尋
せりか書房
私たちが洞窟壁画としてまず思い浮かべるのは、ラスコーや
アルタミラという名前かもしれません。しかし本書の刺激的な
内容は、南仏で1991年に発見されたコスケール海底洞窟や
1994年に発見されたラスコーよりも古く約3万年前に描かれ
た世界最古級のショーヴェといった旧石器時代の洞窟壁画
からスタートします。
著者は、これら旧石器時代の人々により遺された図像や記
号を、私たちに呈示された情報の痕跡として様々な可能性と
ともに解き明かしてみせます。洞窟に眠る謎の数々。壁画が描かれた空間の謎、図
像の起源、そして描いた人々の精神活動と図像はどのような関わりを持っていたの
か。また「ネガティヴ・ハンド」と呼ばれるほとんど唯一の人間自身の似姿である壁に
遺された手型の謎。これら様々な謎を、現代の知的活動領域を手段としながら解読
を進めます。そして図像を「記憶」の問題としてアプローチすることにより、約3万年前
の洞窟壁画が現代の私たちの脳の世界へ継続していることを知ることになります。
また形象を通して動物と人間による関係を明らかにし、私たちの創造性の根源にも
触れているのです。
著者によるはじめの言葉として次の一文が述べられています。「本書は、旧石器時
代芸術に関する多くの先人の導きとともに行う、遥かな記憶への旅である」。
さぁ、記憶への旅へと発とうではありませんか!
         
美術図書室(2Fアートセンター)は無料でご利用いただけます。




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