MIMOCA NEWS 006


 
第6回 常設展示にはどんな作品があるの?
 

今回は常設展示についてです。

当美術館には2階に展示室A、B、3階に展示室Cと展示室が3室あります。これらの展示室はご存知のようにそれぞれが緩やかに連係しています。そのため、常設展示室もどの部屋と固定はされていません。その時々の状況に合わせて変化していますが、基本的には2階のA、Bもしくはそのうちの一室を常設展示にあてています。
さて、みなさんは常設展示と聞くと常に同じ作品が展示されているイメージがありませんか。けれども実際にはそのようなことはないのです。常設展示とは自館の収蔵作品をみなさんにご紹介できる絶好の機会です。このため企画展示にあわせて年間に5回から6回、テーマを決めて展示替えをしています。

80年代の「宇宙」

ところで丸亀市猪熊弦一郎現代美術館には、まれに猪熊が収集した他作家の作品もありますがコレクションの大部分は猪熊の作品が占めています。その数はカンヴァスに描かれたものだけでも約2,000点、紙にアクリル絵具で描いた作品やデッサンを含めると20,000点余りにもなります。これらを特定の作品に偏ることなく将来的にはすべてを1度は展示し、目にすることができるようにと考えて常設展の展示計画を練っています。

ではどのようにして出品する作品を決めるのでしょうか。まず常設展示にもテーマがあります。猪熊の何を紹介したいのか、どのような面を知らせたいのかを明確にし、テーマを決め、それに沿った作品を選出します。

50年代前半の「猫」

また企画展示との兼ね合いがあります。展示室それぞれに扉がなく、閉鎖されていない当館の設計では館内全体の調和が大切になってきます。それぞれの展示室の雰囲気が余りにもちぐはぐだと展示を見終わった後、時としてすっきりしない気持ちが残ることがあります。そこで例えば企画展示の出品作品が特定の年代に集中しているようなら、同年代に制作された猪熊の作品を展示して時代の特徴をつかんでもらうことがあります。他にも緊張感のある作品の展覧会の場合に、鮮やかな色を使った楽しい雰囲気のある作品を展示し対比を楽しんでもらう、逆に館全体を緊張感のある作品で埋めつくすといった展示もあります。

晩年の「顔」シリーズ

こうして館内全体の展示状況を考えるとともに年間を通じてみたときにいろいろな作品が見られるようにも配慮します。猪熊の特徴として具象、抽象、そしてその枠を超えたものへ、と作品の変化が挙げられますが、いつ来ても同じ印象しか受けないのではそれらを有効に展示しているとは言えません。来館するたびに新たな発見や新鮮な感情を覚えてもらえることを願って、展覧会ごとに違いがでるように気を配ります。

渡米時代初期の作品

こうして決定された出品作品は、展示室の模型を使って実際の展示がどのようになるかをシミュレーションし、作品の並びや間隔の空けかたまでを考えておきます。この時点である程度、展示の予測ができ、実際の展示にかける時間が節約されます。もちろん実際には模型でのプランそのままではなく、細かい調整が必要になります。こうして新しい常設展ができあがり、みなさんへお披露目となります。

1度に展示室に出せる作品の数も限られるうえに、テーマや目的を持った展示をしているため、単純に順を追って展示していくことはできず、収蔵作品をすべてお目にかけられるまでにはこの先何年かかるか予想もつきません。しかし展示したことのない作品は出来る限り優先的に出品し、可能な限りたくさんの人に多くの作品に触れてもらいたいと思っています。

なお、カフェミモカやアートセンター内にも作品をおいています。こちらも季節などにあわせて適宜変えていますので、ぜひご覧ください。



 
☆ コーナー名の"Cats in the Storage"とは『収蔵庫の猫たち』という意味です。
猪熊弦一郎の愛して止まなかった猫にちなんで名づけました。
 


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