MIMOCA NEWS 008


exhibition
生誕100周年記念 猪熊弦一郎回顧展
2003年11月23日(日)〜2004年2月8日(日)
休館日 12月25日(木)〜31日(水)

今年は秋より、「生誕100周年記念 猪熊弦一郎回顧展」が始まります。そこで猪熊が
人生の大半を過ごした、そして猪熊芸術の変遷には欠かすことのできないニューヨーク
での生活について、最も親しくされていた友人の一人、森本尚則氏からのインタヴュー
を得ることができましたのでその一部をご紹介したいと思います。
猪熊は1955年よりニューヨークで20年もの歳月を過ごしていますが、森本氏がニューヨ
ークに渡ったのが1958年。猪熊とは住んでいた場所も近く、近所のミートショップで偶然
出会ったのだそうです。森本氏はニューヨークでグラフィックデザイナーとして、現在は木
を使った作品を制作するアーティストとして活躍されています。
 
<出会った頃>
猪熊さんは、夜、大工の学校へ通っていましたね。(*猪熊は自宅の家具をほとんど手
作りしていたそうです。)
家の中での生活自体がすごく洒落てた。人を招くと、テーブルに自ら花を一輪加えたり
お皿を入れ替えたりしてとても気を使っていました。家の中にはいつも1、2点アート(木
切れなどのオブジェのようなもの)を飾っていて、それがしょっちゅう変わってた。いつ行
っても変わってました。まさに生活をエンジョイしている感じだった。(*森本氏は毎週末
ほとんど訪れていたようです)
 
 渡米直後に住んでいた
 128E95STの自宅兼アトリエ
 
 
<猪熊の言葉・制作に対して>
「アイデアは足元にある。物をよく見なさい」 「どんなことでもいいからもっと物をよく見る
習慣をつけなさい」とよく言っていたし、実際、物をよく見ていましたね、なんでもよく覚え
ている方でした。
リンゴの形についても「様々な形があるから良く見なさい」と言われました。それから私も
リンゴをよく見るようになったんですよ。実際リンゴってみんな違う形をしているんです。
丸いリンゴもあるけど、よく見るとリンゴって丸いだけではないんです。いろんな形がある
んですよ。
こんなこともありました。「線というのはどういうのが一番美しいかわかる?」と言って、糸
をまずピンと張るでしょ、それから徐々に緩めていって、「これも綺麗」「これも綺麗」と言
ってよく見せてくれました。
いろいろな物(デザイン)によく感動していました。例えば中華鍋のデザイン。「横、真上
、どこから見ても美しい。鍋の丸い部分は物を炒める時、こうお玉を使って炒めるでしょ、
その手の動きにフィットして無駄がないね」この言葉は、機能性とデザインとの一致につ
いて語っていたんですね。
「アートには終わりがない。もっともっとすばらしいものができるはずだ」とよく言っていま
した。制作中は何もしゃべりませんでしたね。私もそこのところはよく心得ていたから何
も話しかけることはありませんでした。制作態度は厳しいものがありましたよ。
 
以上はインタヴューのほんの一部ですが、猪熊の制作態度、また、いかに生活をエンジ
ョイし、常にアートや美しいということについて深く考えていたかが伺えるお話でした。「よ
く見ること」これが猪熊芸術にはとても大切なことなのかもしれません。そんな猪熊が愛
してやまなかったのが、ブルックリン地区にあるクィーンズハイウェイの橋から見たニュー
ヨークとミース・ファン・デル・ローエが設計したシーグラム・ビルなのだそうです。今度ニ
ューヨークを訪れる機会のある方はどうぞこれらの場所を訪ねてみてください。
 
 猪熊が一番好きだったという 
 シーグラム・ビル
 

森本尚則/もりもとひさのり
アーティスト。1931年、中国大連生まれ。坂出工業高校卒業後、グラフィックデザイン
を故砂田成雄氏に師事。57年フリーのグラフィックデザイナーとして独立。58年単身で
渡米、一時帰国し60年家族と共に再び渡米。デザイン会社勤務、フリーとして独立後、
87年ワークショップスタジオを開設。松やカエデなどの木を使った彫刻絵画や家具作り
を通して木を素材とした新しい美の世界を追求している。




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