MIMOCA NEWS 010



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このコーナーでは、美術館で働く人にインタビューし普段なかなか知る機会のない舞台裏や職員の声をご紹介します。
今回は「MIMOCA NEWS 編集長」の登場です。1999年10月創刊号から本紙第10号まですべてのMIMOCA NEWSを手掛けてきた安藤輝美「編集長」にお話をうかがいました。

Q.「MIMOCA NEWS(ミモカニュース)」って何?

A.美術館の活動をお知らせするものです。美術館にやってくるお客様のほとんどは、展覧会を見て、それしか知らずに帰ってしまう。もちろん展覧会は美術館の最も重要な部分ではあるけれども、一部でもあります。美術図書室やワークショップ、ミュージアムショップ、カフェだってある。猪熊についての調査研究など活動の内容が見えにくい部分も知ってもらいたい。いろんなことをしてますよ、もっともっと楽しめるよ、というのを知ってもらって、美術館を広く活用してもらいたいです。ニュース的なものなので、そのときそのときの新しい情報も入っています。
対象は中学生以上、広く一般。美術館の展示室Aと受付に置いてあります。


Q.刊行のきっかけは?

A.美術館ニュースのようなものが欲しいというリクエストにお答えして。


Q.「編集長」ってどんな仕事?

A.記事を依頼して集めてまとめて紙面づくりしていく。きちきちとした制限がなく、かなり自由に、今回はこんな事が言いたい、取り上げたいということをそれぞれの担当に書いてもらっています。
紙面が限られているので全部を載せられないときは、担当者に交渉してそのコーナーを削ります。文章を短く削ることはしません。生みだす苦労もわかるから、カットするのは非常につらい。もうちょっとこういう感じに書いて欲しいというのもつらい。MIMOCA NEWSの編集は難しいと思います。ちなみに、紙面でカットしたコーナーはホームページで紹介しています。


Q.各号で統一したテーマのようなものがありますか?

A.第9号は猪熊の生誕100周年特集号でしたが、それ以外は特にテーマを決めてはいません。それぞれの活動をそれぞれの角度からご紹介しています。書く人も、同じコーナーが同じ人とは限りません。毎回同じな1つの形式ではなく、柔軟に自由にしてもらうことで、だんだん皆の本音が出て来ているところも面白いかな。


Q.気を付けていることは?

A.用語や内容が専門的になり過ぎないように。また、例えば「Next Exhibition」コーナーで、「みずのき寮からの発信」展の際に展覧会の内容ではなく「みずのき寮」をご紹介したように、ストレートよりはサブ的な情報、サイドから見た部分を意識して取り上げています。


Q.デザインへのこだわりなどありますか?

A.紙面デザインは美術館でスタッフがしています。もともとは予算が限られていたのでそうなったのですが、楽しんでやっています。はじめは統一したものを考えていたけれども、次々変わっていくデザインていうのも結果として楽しいものになっています。自分とデザイナー、たったスタッフ2人です。写真も撮ります。これは苦労。難しい。担当者に叱咤されるときがあります。


Q.自慢は?

A.表紙。猪熊の作品ではなくコレクションを紹介する場がないので取り上げてシリーズ化しています。いかに生活の中の美しいものとして、もっとクローズアップしたかたちでコレクションをアピールするか、こだわりがあります。実はこのため毎回調べる事でゆっくりではあるけれどもコレクションの調査となればいいなとも思う。カメラマンも、そのために毎回張り切ってくれています。イメージを伝え素材によってレイアウトや場所を相談したり、取り直した事もある。カメラマンからカットの指示があるときもあります。絶版となった『画家のおもちゃ箱』に対するリクエストが多いけれど、あれは並べ方やエッセイなど猪熊にしか出せないものだから、記事がまとまればコレクションを紹介できるような本にしたい。目指すところというか、野望かな。


Q.嬉しいことは?

A.形になったとき。一つにまとまったとき。完成したとき。お客さんが欲しいって言ってくれたとき。集めていますという声を聞いたとき。


Q.印象深かったことは?

A.リサーチしていると、いろいろなところで、美術館の成り立ちのころ、それにかかわった人たちの苦労話がうかがえます。小さい文章にまとめてしまうのがもったいないような、いろんなことが明かされています。
あと、記事の中での美術館の人の発言が楽しい。そんなことに気を付けていたのか、など。


Q.今後の展望は?

A.MIMOCA NEWSは、職員の生の声を紹介できる場でもあると思っています。アンケートのように、お客様の声を聞ける場というのはあるけれども、なかなか働いている人の声を発信できる場ってないから、そういう意味でもいろんな可能性がある場です。ここのところ「ワークショップ」コーナーが頑張っている、毎回毎回スタイルが進化を遂げています。
記事を書くにはそれなりにリサーチがいるわけで、自分でもやっているうちに発見があって、担当者それぞれが面白いんじゃないかと。だからこそ、読者も面白いのではないか。それを1番最初に読めるのが特権かな。ただ、もうちょっとラフな感じにしたい。今は文章が硬い、お客さんに対して正座した感じ。もっとくだけた、本音を書いてくれたらうれしい。書く人たちに対してのメッセージです。


Q.では、最後に読者のみなさんにメッセージをとうぞ。

A.とりあえず読んでください。受付、展示室で手に取って持って帰ってくれたら、美術館の新しい発見をしてもらえたら、集めていって美術館通になってもらえたら、うれしいな。こういうコーナーをつくって欲しいというようなリクエストも募集します。みなさんの声をお待ちしています。


<インタビュアー感想>

記事を書く側としては、耳が痛い部分あり、目からうろこの部分あり、加えて自分なりのこだわりも多少あったりして、なかなかすんなりとは感想が出て来ません・・・。そんな職員それぞれに抱える思いが、安藤編集長によって束ねられ、包まれることで、あらたにMIMOCA NEWSというひとつのメッセージとなってお客様へ発信されているんだと再認識しました。




<フォトグラファー感想>

カメラを通して見えたのは、やわらかな物腰でデリケートな所のある安藤さん。でもインタビューを通して見えたのは太いしんの通った強さのある安藤さん。MIMOCA NEWSとどこか似ている所がありませんか?






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