丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、瀬戸フィルハーモニー交響楽団(以下、瀬戸フィル)を講師にお迎えし、子ども達が音楽の楽しさを体験できるワークショップを実施しました。今回は10月2日(土)開催「音描く」のプログラムの様子をお届けいたします。


開催場所:ミュージアムホール、造形スタジオ
撮影:福田ジン

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子どもがさまざまな音に出会い、また自ら音を生み出し、奏でる楽しさを体験できることを目的として20217月から月毎に内容を変えて音楽ワークショップを実施しています。


10月に実施した「音描く(おんがく)」は瀬戸フィルの生演奏を聴いて、頭に浮かんだイメージをスケッチするプログラム。このプログラムは「こども桜プロジェクト」という国際文化交流活動をベースにしています。「こども桜プロジェクト」は2006年からスタートし、海外の子どもに日本の曲をピアノで聴かせ、曲の詳細は説明せず、感覚的な印象のみを頼りに絵を描いてもらう活動です。

参加者の子ども達はまずミュージアムホールに集合。このホールに初めて入ったという子も多く、波立つように半円を描く美しいブルーの椅子に座り、やや緊張の面持ち。

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いよいよチェロ:崎元蘭奈さんとピアノ:宮﨑朋菜さんによる演奏が始まりました。チェロはバッハの『チェロ無伴奏組曲』第1番。ピアノは宮﨑さんご自身が作曲された『屋島』。子ども達にはどういった曲か知らせないまま、演奏されました。

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演奏終了後、造形スタジオに移動。四つ切りサイズの画用紙にクレヨンを使って演奏から感じとった情景や色を描きました。

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最後に、ミュージアムホールの舞台で自分が描いた作品を発表。舞台という非日常の場所でしたが、何を感じ、どのように描いたか、自分の言葉で演奏者や私たちに伝えてくれました。
同じ曲でも子どもの感じ方は多様。

「ドキドキしたような、ワクワクしたような感じもあったから、海に船を浮かべて出発する絵を描きました」
「ピアノの音が跳ねてる感じで聞こえたので、跳ねてるっぽい絵を描きました」
「化け物」

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本企画にご協力いただいた瀬戸フィルの業務執行理事・宮﨑節二さんの感想
「子どもとのワークショップはいつも発見があります。"ああ、こういう風に感じているんだ"と。色の可能性が無限にあるように、音の可能性も無限にあります。その時の心情あるいは生活感、その地域によって、あるいは季節感によって感じることを、何かで表現していく。表現の手段をある程度、トレーニングして、テクニックを磨いていくと、自分の心の中のものを正確に伝えることが出来ます。これは子どもの時に体験すべきことで、いずれ何かの時に花咲きます」

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猪熊弦一郎(1902-1993)は「絵には勇気がいる」(*1)という言葉を残しています。今までにないものをつくる、常識を超えた未知の世界を切り開く勇気--その言葉通り、子ども達は悩みながらも、自分なりの表現方法を追求しました。

MIMOCAはこれからも、子ども達が豊かな感性を持ち、自由に表現することができるプログラムを提供していきます。

講師プロフィール
瀬戸フィルハーモニー交響楽団
定期演奏会をはじめ自治体、企業などへの出張演奏や県内外の文化団体との共演など多彩な演奏活動を展開している。特に小・中学校を訪問しての音楽教室で音楽の楽しさを体感できる企画を盛り込み、音楽人口の拡大に取り組む。


1―『私の履歴書』p.6200341日発行、公益財団法人ミモカ美術振興財団


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