丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、2021年12月18日(土)から2022年3月21日(月・祝)まで、「丸亀での現在」を開催しています。
展覧会の参加アーティストの一組である「Nadegata Instant Party」の中崎透さん、山城大督さん、野田智子さんへのインタビューの後編です。今回は前編に引き続き、コロナ禍での《ホームステイホーム》制作の経緯や、作品を通じて見えてきたものについてお聞きしました。


インタビュアー・文/須鼻美緒 撮影/宮脇慎太郎

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ー丸亀側のホストが決まってから、ホームステイするゲストはどのように選んだんですか?

野田
ホストのみなさんとの事前ガイダンスの際に、自己紹介してもらった時のキャラクターを読み取って、これまでナデガタのプロジェクトに関わってくれた日本全国、ほぼ47都道府県の人たちの中から、合いそうな人をマッチングしていきました。
職業的な組み合わせだったり、オンラインに慣れてるかどうかだったり。須鼻さん(インタビュアー)だったら、Zoomに慣れていそうだったんで、工房で窯焚き中という、ちょっとイレギュラーな美大生を組み合わせました。

ー山形のおふたりですね。普段美大生と話す機会なんてまずないですし、山形の知り合いもいなかったので、すごく盛り上がりました! 一緒に参加した父も楽しんでました。
しかし、ホームステイがオンラインで、しかもそれがアート作品になるっていうのは、参加者のみなさんはどういう感覚だったんでしょうか? 我が家もそうでしたが、完成した映像を見る限りでは、アート作品だからどうということもなく、みなさんいたって素の感じでしたね。

山城
1時間くらい話してると、撮影されてることは忘れちゃいますからね。自宅でモニターの前で、録画されてることもそんなに意識しないでしゃべったものが、展覧会場に流れるっていうのは、日常からのギャップが大きいですよね。
美術館に出入りして、アーティストと言われる人と会って、作品になっていくプロセスを共有できると、自分も参加しているという実感を得られると思うんですけど、今回はみなさん自分の家から参加してるので。
自分のいつもの場所を、美術館や作品にダイレクトに持っていけたのは、この作品のかなり特徴的なところだと思います。

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山城大督さん

中崎
今回、28組それぞれ3時間くらいずつ、ホストとゲストがオンラインで夕食をともにしたり、翌日にMIMOCAの外で人文字をつくって風船を飛ばす時の動画を編集したんですけど、ほんとにどの家のホームステイも全部おかしくて。
僕は対面の説明会にも行けてなくて、実際にホストのみなさんと会えたのは1日だけだったのに、すでに3時間も動画を見てるから、なんだかもう、みなさんとは友達の気分でした。

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オンラインホームステイの様子(MIMOCAスタッフ撮影)

ー展示されている動画を見たら、1本の動画の中でもそれぞれの家のホームステイの様子が入れ替わり出てきて、どこも絶妙におもしろい部分が切り取られていて、編集がすごいと感じました。

中崎
全部で8本、それぞれ15分あって、1分くらいずつ全体をぐるっと見て回るとしても、ある程度の印象というか、言葉が残ることを意識しました。
おもしろい話がたくさんあったんですが、その話の前提がわからないと理解できないこともけっこうあって。だから、冒頭にそれぞれの職業とか、何をやってるかといった自己紹介を入れて、全体のリズムを考えて編集していきました。

山城
今回、動画を編集してて思ったんですけど、こうやっていま1時間ぐらい話してると、ひとつの「かたまり」としての「1時間」があるわけですが、本当はここにいる4人の「1人ずつの1時間」があるから、ここには全部で「4時間のかたまり」があるんです。1時間と思ってたものが、本当は1時間の中に4つ時間が流れてる。
今回の《ホームステイホーム》には、90人近くが参加しているので、90時間以上の時間のかたまりがあるわけです。
これを、コロナ禍の状況に当てはめてみると、今までだったら、学校に行ったり、イベントがあったりとかで、みんなの時間がひとかたまりとしてあったんだけど、この2年間くらいは、それぞれが過ごした時間がずーっといっぱいあったんだろうなと思って。
ほとんど見られることもなく、記録されることもなく、晴れの場でもない、わけのわからない時間を、みんながそれぞれに過ごしてた。
それを、今回はちょっとだけつまみ食いさせてもらったというか。少しだけ垣間見れた中の断片を、展示できたと思ってます。

ーコロナ禍での作品発表は今回がはじめてでしたか?

野田
はじめてでした。ナデガタとしても2年半ぶりの展示でしたが、手応えはすごく感じていて。これからこの作品がどう語られるのか楽しみです。

中崎
10年とか20年ぐらい経って、また違った意味が出てくるんじゃないかと。
このプロジェクトをきっかけに、今回参加してくださった人たちの関係が、どこかで縁が続いたり、時限爆弾的に仕込まれたらいいなと思ってます。

野田
そのためにも、展示が終わる頃に今回展示している動画の上映会みたいなものをやれるといいですね。

山城
見終わってから、ホストや今回協力してくれた人たちと話す会ができたらいいな。

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◎関連リンク
「丸亀での現在」
「丸亀での現在」《ホームステイホーム》ーNadegata Instant Partyインタビュー 前編